屋根リフォームのカバー工法に下地作りは必要か?
既存の屋根はどういう作りになっているのか?
屋根リフォームで金属を使ったカバー工法のお見積りを出した時、よく聞かれるのが『下地コンパネ 12(9)㎜』『下地ルーフィング』という見積もり項目に対して、「既存の屋根を残してカバーするのに、またその上に下地を作る必要があるのですか?」ということです。
金額もそれなりにするので、これが無くてもいいのなら随分と安くなると考えるのも当然です。
また実際に既存の屋根に『直留め』で見積もりを出してくる業者さんもいるようです。(昔は多かったと思いますが、最近はちゃんと下地を作る見積もりを出す業者さんが増えているとは思います。)
少しでも安い方が良いのは当然ですから、「本当に必要なの?」と思われるのでしょうが、当社は基本的には下地作りからの見積もりを出させていただいております。
その理由は既存の屋根がどういう作り(納まりといいます)になっているかを知る必要があります。
金属での屋根のカバーリングで最も多い既存の屋根はカラーベストやコロニアル、フルベストといった、彩色石綿板と呼ばれる屋根材ですので、この屋根材を例にとってご説明します。
まずその下地は野地といって、元々の屋根の形を形成する部分でコンパネという合板で貼られることが多いです。その厚さは9㎜、12㎜、15㎜といった厚みです。その上にアスファルトルーフィングという防水紙を敷き、屋根材である彩色石綿板を留めつけていきます。
野地板が一番厚いものだとして15㎜、ルーフィングは1㎜程度、彩色石綿板は5~6㎜といったところですから、全部足しても22~23㎜程度です。
それに対して彩色石綿板を留める釘は32㎜あります。
つまり屋根裏に入り屋根の裏側を見れば、釘の先端がたくさん出ていることが分かります。
実際には留め付けた屋根材に次の屋根材を被せていくので、釘の頭部分は屋根の表面に出ることはありませんし、ルーフィングも施工後に締まってくるので、新築直後に雨が漏るといったことはありません。
しかし年数が経ち、重なっている屋根材の隙間に小さなごみや埃が入って、『毛細管現象』といわれる水の吸い上げが起こったり、ルーフィングの劣化で釘とルーフィングの間に隙間が空いてきたり、そうやって入ってくる僅かな水が徐々に野地板にダメージを与えていき、最後には居室まで雨水が落ちてくることになります。
彩色石綿板自体にヒビや割れがあれば、当然症状の進行は早まります。
もし雨漏れが原因でリフォームを検討しているのであれば、そのまま新しい屋根材を被せることが危険なことは容易に想像できると思いますし、屋根の構造を知れば現状は雨漏りがなくても気になりますよね。
不陸を拾いやすい金属屋根
もう1点当社が下地を作ることを基本としている理由に、『不陸(凸凹)を調整する』という意味があります。
屋根面はできるだけ勾配(屋根の傾斜)に沿って水平であることが求められます。
しかし、最も目につく屋根材自体は重ねて施工しますし、製品そのものにも段差や模様があるので、決して水平とは言えません。
その上に新しい屋根材を被せるので、施工する面はできるだけ水平にしてから施工する必要があります。
また金属の外装材(屋根だけではなく外壁もそうです)は下地の不陸を拾いやすいという性質があります。
せっかくの新しい屋根なのに最初から見た目が凸凹ではイヤですよね。
そんな理由から、屋根をカバー工法でリフォームする際は下地作りは必要な工程なのです。