外壁リフォームの基礎知識
外壁塗装・外壁リフォームのポイント
住まいの顔ともいえる大事な外壁は、外観を美しく見せる一方で、風雨や太陽光線、気温の変化などにもさらされ、汚れや劣化が進みやすい環境にあります。何の手入れもせずに傷みやひび割れを放置しておくと、ひび割れがさらに悪化したり、表面を擦ったときに白い粉が出たり(チョーキング)、さらには水が浸み込んで内部が腐食、なんてことにもなりかねません。逆に定期的なメンテナンスを行っていれば、数十年単位で寿命を延ばすこともできます。
今回は、外壁塗装や外壁のリフォームで役立つ情報をまとめてみましょう。
■外壁塗装の役割
住宅の外壁に使われている素材は、モルタルやサイディングと呼ばれるボード状の外壁材が一般的です。外壁の下地は塗装による被膜で守られていますが、年月とともにこの塗装は劣化して、剝がれたりひび割れたりします。被膜が破れると下地にまで影響が及び、柱や土台といった住居の構造部分まで劣化させてしまうことがあります。
外壁塗装の工事には、もちろん住宅をきれいに見せる効果がありますが、それだけではなく、外壁の塗膜の性能を維持し、家の構造自体の寿命を長持ちさせること、ひいては資産価値を高めることも目的となります。
■外壁塗装・外壁リフォームの目安期間
環境や使われている塗装材の耐久性によってタイミングは変わってきますが、モルタル壁の場合は10年前後で塗装材を塗り替えるのが一般的とされています。下地のモルタル自身に問題がなければ、塗装を10年ごとに繰り返すことで長期間性能を保ち続けることができます。
サイディングの場合も塗装材の種類、性能にもよりますが、塗り替えのタイミングは10~20年程度、サイディング自体の交換は30~40年を目安に考えるとよいでしょう。
■外壁に生じるトラブルとその原因、対策
一般的な時期の目安の他にも、外壁にはいくつかの塗装タイミングの目安となる現象が起きます。色褪せや汚れの他、以下のような状態が確認出来たら外壁塗装の検討のタイミングといっていいでしょう。
・ヘアクラック 下地ではなく、塗膜にごく細いヒビが入る (モルタル・窯業サイディング)
・クラック 下地がひび割れる (モルタル)
・チョーキング 壁全体にチョークのような細かい粉が吹く (モルタル・サイディング)
・シーリングの痩せ、ひび 複合部や目地にひび割れが入る (窯業サイディング)
・白錆 壁に白い細かな粒が現れる (金属サイディング)
■モルタル壁のリフォームは、塗装材の選択がポイント
モルタルの外壁で目につきやすいトラブルはひび割れ(クラック)です。特に破風の部分に生じたものや外壁を横に走るひび割れの場合は雨をため込みやすく、下地の傷みを早めます。大きなひび割れには弾性のある充填剤を打ってから塗料を塗りこんで対応することになります。
大きなひび割れを補修した後やチョーキングに対して塗装を行う場合、下地となるモルタルに樹脂系の塗料を塗り替えるリフォームが有効的です。使われる塗料には、価格の安い順で「アクリル樹脂塗料(耐用年数:5~8年)」「ウレタン樹脂塗料(耐用年数:7~10年)」「ラジカル制御形樹脂塗料(耐用年数:10~15年)」「フッ素樹脂塗料(耐用年数:15~20年)」などがありますが、現在はアクリル、ウレタンはほとんど使われなくなってきています。
また近年では、「光触媒塗料」「無機塗料」など高性能の塗料も開発されてきています。
現状の外壁の状態やどのような仕上がりにしたいか、また予算なども含めて私ども業者とよく相談して塗装材を決めていくことをお勧めします。
■サイディングにも「塗り替え」やメンテナンスが重要
「サイディングには塗り替えは不要」「サイディングは長期間メンテナンスフリー」と少し勘違いされている話を耳にされることはありませんか。サイディングであっても、表面は塗装による被膜に守られています。工場製品であるためほとんどが焼付塗装の二度塗り、いわゆるツーコートツーベークのため、現場で塗装する常乾塗装よりは耐久性に優れていますが、塗装である以上モルタル壁と同様にチョーキングなどの塗膜劣化は起きます。そのためサイディングであっても一定時期での塗り替えのメンテナンスは必要になります。
また、サイディングの継ぎ目・目地を埋めているシーリング(コーキング)の劣化はサイディングの塗膜の劣化よりさらに早いので、防水加工を定期的に行う必要があります。シーリング部にひび割れが目立ってきたら雨が浸入している可能性もありますので、その場合はこの部分だけでも補修する必要があります。
■モルタルをサイディングに張り替えるリフォーム
モルタルの外壁が相当傷んできた場合、外観や断熱性といった外壁として必要な機能を重視して、サイディングに変えることを検討すべきでしょう。
そもそもサイディングは工場で一貫生産されるので、品質のばらつきがなく、施工もしやすいのが特徴です。サイディングにはスチールなどの金属を表面材にして、中に断熱材を入れた金属サイディングと、セメントや木片などを原材料にした窯業サイディングあります。そのほかに木質系外壁材、ALC(軽量気泡コンクリートパネル)などもありますが、タイル調・レンガ調・石積み調・スパン柄などデザインやカラーリングの自由度が高いのもサイディングの特徴で、現在では窯業・金属を足すと、新築の戸建て住宅の8割ほどがサイディングの外壁で建てられています。
モルタルからサイディングに変更する場合、屋根と同様に「重ね張り」や「張り替え」といった工法があります。「重ね張り」はモルタル壁やその他既存壁を下地にして新たにサイディングを取り付ける工法で、外壁リフォームではよく行われています。軽量の金属サイディングが使われることが多く、基本的には規格化された外壁材を取り付けていくので、作業としてはスムーズに施工できることが多いです。
ただし新たな外壁をプラスすりことになるので、土台や柱の状態、強度を調べることが必要になります。見た目がきれいになっても、強度が低下してはリフォームの意味がなくなるからです。
一方で、既存の壁を新しいものに取り換えたり、モルタル壁を撤去してサイディングに入れ替える場合を「張り替え」といいます。新築同様の方法で新たに外壁を張っていくので、窓回りやそのた開口部との接続部分もすっきりと仕上がりますが、屋根の葺き替え同様工期日数がかかり、住みながらの施工も難しいため、費用としては嵩むことになります。
サイディングは「重ね張り」であっても断熱性や遮音性も上がるため、例えばエアコンの効率が高まったり、より静かな住環境が得られるなどのメリットがあります。「塗り替え」よりは費用がアップしますが、外観も一変するので、求める住環境や住まいへの思いを考慮してうまく使い分けたいものです。
いかがでしたか? 3回に渡って外装リフォームについてお話しさせていただきました。
リフォームには修理・修繕の意味合いももちろんありますが、それだけではなくより住みよい住環境つくりやこれからの皆さんの人生を豊かなものにしていくための家のオーバーホールという側面もあります。
一度、ご夫婦でまたご家族で家のことお話ししてみてはいかがですか。